自賠責保険・自動車保険(任意保険)請求の手引:林行政書士事務所

2007年〜2008年のニュース

ホームページへ > 判決・法改正・交通事故等のニュース 
【01】 「道路交通法改正試案」飲酒運転・ひき逃げ厳罰化 (2006年12月30日)
【02】 人身事故に重い罰・刑法に新規定、法務省方針  (2006年12月31日)
【03】 低髄液圧症候群が否認された判決  (2007年2月19日判決)
【04】 自損事故で避難中ひかれ死亡、最高裁が保険金の支払い命令  (2007年5月29日)
【05】 脳脊髄液減少症治療の保険適用「不可」:政府答弁書  (2008年1月7日)
【06】 〈道交法〉後部座席ベルト義務付6月から 警察庁が政令案 (2008年3月3日)
【07】 被害者による16条請求権が優先とされた判決   (2008年2月19日判決)
【08】 「事故で脳脊髄液減少症を発症」因果関係認めず (2008年5月20日)
【09】 <髄液漏れ>事故で発症と推認 東京高裁(2008年8月1日)
【10】 ひき逃げ事故、飲酒運転止めなかった同乗者に賠償命じる判決(2008年10月15日)
【11】 事故目撃の姉に慰謝料認定 小3女子死亡で秋田地裁(2008年10月22日)
事故目撃の姉に慰謝料認定 小3女児死亡で秋田地裁(共同通信2008.10.22 16:11)
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008102201000449.html

秋田市で2006年12月、交通事故で死亡した小学3年の女児=当時(8)=の両親と姉(13)が、車を運転していた秋田県男鹿市の女性に計約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁は22日、事故を目撃した姉への慰謝料も含め、総額約6100万円の支払いを命じた。

鈴木陽一裁判官は「水泳教室帰りの妹を迎えに行き、眼前で無残にはねられるのを目撃させられ、計り知れないほど大きな衝撃を受けた」と指摘。当時11歳だった姉の精神的苦痛として200万円の慰謝料を認定した。

交通事故死を目撃した兄弟姉妹については近年、慰謝料を認める判決が相次いでいる。損害賠償請求者として民法は被害者の父母、配偶者、子を規定し、兄弟姉妹については明文化していないが、この日の判決は規定を類推適用した。

判決によると、06年12月19日夜、秋田市の県道で、バスを降りて横断中の女児が女性の軽自動車にはねられ、翌日死亡した。姉は歩道で妹を待っていた。


秋田市で2006年12月、交通事故で死亡した小学3年の女児=当時(8)=の両親と姉(13)が、車を運転していた秋田県男鹿市の女性に計約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁は22日、事故を目撃した姉への慰謝料も含め、総額約6100万円の支払いを命じた。
 鈴木陽一裁判官は「水泳教室帰りの妹を迎えに行き、眼前で無残にはねられるのを目撃させられ、計り知れないほど大きな衝撃を受けた」と指摘。当時11歳だった姉の精神的苦痛として200万円の慰謝料を認定した。

 交通事故死を目撃した兄弟姉妹については近年、慰謝料を認める判決が相次いでいる。損害賠償請求者として民法は被害者の父母、配偶者、子を規定し、兄弟姉妹については明文化していないが、この日の判決は規定を類推適用した。

 判決によると、06年12月19日夜、秋田市の県道で、バスを降りて横断中の女児が女性の軽乗用車にはねられ、翌日死亡した。姉は歩道で妹を待っていた。


裁判・法改正等のニュースより(2007年〜)
「道路交通法改正試案」飲酒運転・ひき逃げ厳罰化( 毎日新聞最終更新:12月28日13時6分)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061228-00000038-mai-soci
警察庁は28日、飲酒運転者に車や酒を提供した者や同乗者にも新たに懲役刑などを科す道路交通法改正試案をまとめた。飲酒運転自体や救護義務違反(ひき逃げ)の罰則も大幅に厳しくする。罰則は01年にも重くしたが、今年8月に福岡市で幼児3人が亡くなった事故をきっかけに社会問題化したことを重視し、さらに厳罰化を図ることにした。同庁は今後、国民の意見を募ったうえで、来年の通常国会に改正案を提出する。

試案は、ひき逃げを現行の「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」から「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」へと2倍に引き上げた。正常な運転ができない「酒酔い」は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」を「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に、酒気帯び(呼気1リットル中に0.15ミリグラム以上のアルコール)は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」を「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」にする。

また、飲酒運転をそそのかしたり車両や酒類を提供する行為は、これまで刑法の教唆・ほう助罪を適用して取り締まってきたが、従犯扱いだったため、罰則は違反者の半分以下に過ぎなかった。このため、新たに道交法で罰則規定を新設する。
 車、酒の提供は酒酔いで「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」、酒気帯びで「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」としており、運転者と全く同じ罰則内容。同乗者は酒酔いで「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、酒気帯びで「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」にする。

さらに、罰金(30万円以下)だけだった飲酒検査拒否を、「3月以下の懲役または50万円以下の罰金」に引き上げる。懲役刑を新たに設けることで抑止効果を狙う。

免許取り消し後、再度免許申請をできるまでの欠格期間についても「重大事故を起こして免許を取り消されても、すぐに運転している」との遺族感情に配慮し、現行の5年から10年に延ばす。

01年の改正では、酒酔い運転が「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」になるなど罰則が強化され、刑法に危険運転致死傷罪(致死の最高刑懲役20年)が新設されていた。

今回の道交法改正が実現すると、飲酒・ひき逃げ死亡事故など最も悪質なケースに適用される危険運転致死罪とひき逃げの併合罪の上限が、現在の25年から30年になる。【遠山和彦】

 ◇後部座席のシートベルトの着用義務付け
警察庁の道路交通法改正試案では、これまで交通違反に問わなかった車両の後部座席のシートベルトの着用を義務付けた。昨年の交通死亡事故では、後部座席の非着用者の致死率が着用者の約4倍に上ったが、今年10月の調査では一般道で7.5%、高速道で12.7%と着用率は低率にとどまった。罰則は設けないが、当面、高速道路での違反について行政処分の対象にする。

また、高齢運転者対策として、75歳以上の高齢運転者に認知症検査と高齢者標識「もみじマーク」の表示を義務付ける。
聴覚障害者には車両へのワイドミラー装着を条件に普通免許の取得を認め、併せて障害者用の標識の表示も義務付ける。

このほか、現行では標識で許可される場合を除いて認められていない自転車の歩道通行を児童・幼児が運転する場合や車道通行が危険な場合は認め、保護者に児童・幼児のヘルメット着用を努力目標として求める。


人身事故に重い罰・刑法に新規定、法務省方針(日本経済新聞2006年12月31日)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20061231AT1G2802A30122006.html
「危険運転致死傷罪」(死亡時懲役20年以下、負傷時15年以下)が適用できない交通事故について、法務省は刑法に新たな規定を設ける方針を固めた。「業務上過失致死傷罪」(懲役・禁固5年以下または罰金50万円以下)を適用していた脇見運転、速度超過などドライバーに重い過失がある人身事故を対象とし、罰則も引き上げる。2月に法制審議会に諮問し、2007年通常国会への刑法改正案の提出を目指す。

飲酒運転、ひき逃げについては、警察庁が今月28日、罰則を引き上げる道路交通法改正試案をまとめたばかり。刑法の危険運転致死傷罪の構成要件が厳しく立件が難しいとされるため、法務省は新たな規定が必要と判断した。 (07:00)


軽微追突後の28歳女子の症状は起立性頭痛なくブラッドパッチも改善見られず低髄液圧症候群を否認、頚椎捻挫の長期化は心因性で5割減額
福岡高裁 平成19年2月13日判決 平成17年(ネ)第336号 平成18年(ネ)第666号   出典:自動車保険ジャーナル 第1676号 平成19年3月1日発行
信号待ち停車中の乗用車運転の28歳女子がクリープ状態の乗用車に追突され、頚椎捻挫、低髄液圧症候群を負ったとする事案につき、担当医は頚椎捻挫の一部ともXに説明しているので低髄液圧症候群の「確定診断をすることには疑問がある。」、低髄液圧症候群の「典型的な症状であるところの起立性頭痛はXには見られない」上、Xに「ブラッドパッチ療法を試みたものの、症状はあまり改善しなかった」等、「低髄液圧症候群は認められず」、Xの症状は頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)で、症状の長期化は心因性要素として5割減額を適用した。

自損事故で避難中ひかれ死亡、最高裁が保険金の支払い命令  (読売新聞2007年5月29日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070529-00000212-yom-soci
高速道路で自損事故を起こし、路肩に避難しようとした際に後続車両にひかれて死亡した男性の遺族が、自動車保険の搭乗者死亡保険金を受け取れるかどうかが争われた裁判の上告審判決が29日、最高裁第3小法廷であった。

上田豊三裁判長(退官、藤田宙靖裁判官が代読)は「男性は危険を避けるためやむを得ず車外に出てひかれたもので、乗車中の事故が原因で死亡したと解釈できる」と述べ、保険金を受け取れないとした2審判決を破棄。損害保険ジャパン)東京都)に保険金1000万円の支払いを命じた。同社の敗訴が確定した。

判決によると、この男性は2002年、東北縦貫自動車道で乗用車を運転中、中央分離帯にぶつかる事故を起こし、路肩に避難するため車を降りて車線を横切った際、大型トラックにひかれて死亡した。

脳脊髄液減少症治療の保険適用「不可」:政府答弁書  (2008年1月7日18時55分配信 医療介護情報CBニュース)
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080107-00000006-cbn-soci
交通事故などの後遺症で脳脊髄液が漏出する「脳脊髄液減少症」について、赤嶺政賢衆議院議員(共産党)が提出した質問主意書に対し、政府はこのほど、「同症の診断・治療法はいまだに確立されていない」として、一部の研究者から治療効果が指摘されている「ブラットパッチ(硬膜外自家血入)治療法などの保険適用や患者の実態調査は困難である」などとする答弁書を示した。

同症は、交通事故やスポーツ障害などによる頭部・全身への強い衝撃で脳脊髄液が漏出し、頭痛や眩暈(めまい)といったさまざまな症状を引き起こす。潜在的な患者は全国で30万人にも上るという。原因が特定されにくいため「怠け病」「精神的なもの」と診断されることが多く、治療法が未確立であるとともに医療保険の適用が認められていないことにより、患者らは精神的にも経済的にも負担を強いられている。ブラットパッチ両方については、ある研究者が「約7割の例で症状の改善が得られた」と報告しているが、保険適用外であるため入院費込みで30万円前後の負担となる。このような状況を受けて、赤嶺議員は12月18日、政府に「同症の研究や治療を推進すべき」とする質問主意書を提出。ブラットパッチ療法などの新しい治療法の保険適用に関する政府の見解をただすとともに、学校生活内の事故によって発症した子どもや交通事故などの外傷による患者の実態調査を求めるよう促した。

政府はこれに対して、「同症の診断・治療法はいまだに確立されていない」と強調。そのため「現時点ではブラットパッチなどの治療法の保険適用や実態調査は困難」と答弁した。また、赤嶺議員は、昨年4月に厚生労働省が関係学会と研究費補助金事業として発足させた「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究」の概要や保険適用の承認との関係についても質問。これを受けた政府は、研究概要を「病態解明と診断基準の確立を進め、治療法の確立を目指すこと」と説明した。しかし、新しい治療法の保険適用の可否については「同研究との関係にかかわらない」として、厚労省の専門機関の検討を経る既成の手続きが必要であるという見解を示した。

<道交法>後部座席ベルト義務付け6月から 警察庁が政令案(毎日新聞2008年3月6日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080306-00000039-mai-soci
警察庁は6日、子供や高齢者について歩道での自転車通行を認めることや、自動車の後部座席のシートベルト着用を義務付ける改正道交法の細部を規定する政令案をまとめた。今月7日かrた4月5日まで国民の意見を受け付け、6月1日に改正法施行を予定している。

政令案では、車道通行を原則とする自転車について、13歳未満の自動、幼児と、70歳以上の高齢者、身体障害者について歩道通行を認める。

後部座席のシートベルト着用は、高速道路で違反した場合は、違反者に行政処分(1点)が科せられる。4人以上の子供が後部座席に座るなどしてベルトが行き渡らない場合や妊婦などは着用は免除される。

また、75歳以上の高齢者や聴覚障害者は運転時にもみじマークなどの標識の装着を義務付け、違反した場合は行政処分(1点)と普通自動車の場合は反則金4000円を科す。【遠山和彦】

被害者による16条請求権(被害者請求権)の額と社会保険者による第16条代位請求権の額が自賠責保険の限度額を超えた場合、被害者請求が優先とされた判決 (2008年2月19日 最高裁第三小法廷判決) 
http://www.courts.go.jp:80/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35763&hanreiKbn=01
主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由
上告代理人高野真人の上告受理申立て理由について
1 本件は,承継前被上告人A(以下「亡A」という。)運転の普通自動二輪車とB運転の原動機付自転車(以下「B車」という。)とが衝突した事故について,亡Aが,B車を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の保険会社である上告人に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)16条1項に基づき保険金額120万円の限度で損害賠償額の支払を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 大阪市内に居住していた亡A(当時76歳)は,平成15年8月23日,普通自動二輪車を運転して信号機により交通整理の行われている交差点を直進しようとして,同交差点を反対方向から右折中のB車と衝突し(以下「本件事故」という。),外傷性くも膜下出血,脳ざ傷,顔面打撲ざ創等の傷害を負い,同日から平成16年1月29日までC病院等に入院した。
Bは,上告人との間で,B車を被保険自動車とする自賠責保険の契約を締結していた。

(2) 本件事故に係る亡Aの損害額(以下「本件損害額」という。)は合計33
7万9541円であり,自賠法13条1項,同法施行令2条1項3号イに定める保険金額(以下「自賠責保険金額」という。)は120万円である。

(3) 大阪市長は,平成15年9月から平成16年1月まで,亡Aに対し,老人保健法(平成17年法律第77号による改正前のもの。以下同じ。)25条1項に基づき前記傷害に関して医療を行った。上記医療に関し大阪市が支払った価額(以下「本件医療価額」という。)は206万4200円であり,大阪市長は,同法41条1項により,本件医療価額の限度において,本件事故に係る亡AのBに対する損害賠償請求権及び亡Aの上告人に対する自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払請求権を取得した。

(4) 大阪府国民健康保険団体連合会は,大阪市長から同市長が老人保健法41条1項により取得した請求権に係る損害賠償金の徴収等の事務の委託を受け,平成16年6月28日,上告人に対し,自賠法16条1項に基づき,自賠責保険金額の限度で本件医療価額の支払を求めた。他方,亡Aは,同月29日,上告人に対し,同項に基づき,自賠責保険金額の限度で,本件損害額のうち前記医療の給付を受けたことによってはてん補されない損害額(以下「本件未てん補損害額」という。)
の支払を求めた。本件未てん補損害額は,自賠責保険金額である120万円を超えている。

(5) 上告人は,次のとおり主張して亡Aの請求を争っている。本件医療価額と本件未てん補損害額の合計額は自賠責保険金額を超えるところ,一般に,自動車の運行によって生命又は身体を害された者(以下「被害者」という。)が自賠法16条1に基づく損害賠償額の支払請求権(以下「直接請求権」という。)を行使し,他方,老人保健法25条1項に基づく医療の給付(以下「医療給付」という。)を行った市町村長(以下,単に「市町村長」という。)が同法41条1項により取得した直接請求権を行使した場合において,被害者の直接請求権の額と市町村長が取得した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときは,被害者及び市町村長は,それぞれの直接請求権の額が被害者の損害額に対して占める割合に応じて比例案分された自賠責保険金額について自賠責保険の保険会社に支払を求めることができるにとどまると解すべきであるから,本件においても,亡Aは上告人に対して自賠責保険金額120万円全額の支払を求めることはできない。

3 原審は,亡Aは大阪市長に優先して上告人から自賠法16条1項に基づき本件未てん補損害額の支払を受けることができるとして,上告人の主張を排斥し,自賠責保険金額120万円全額の支払を求める亡Aの請求を認容すべきものとした。

4 被害者が医療給付を受けてもなおてん補されない損害(以下「未てん補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で,市町村長が老人保健法41条1項により取得した直接請求権を行使し,被害者の直接請求権の額と市町村長が取得した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,市町村長に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解す
るのが相当である。その理由は,次のとおりである。

(1) 自賠法16条1項は,同法3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときに,被害者は少なくとも自賠責保険金額の限度では確実に損害のてん補を受けられることにしてその保護を図るものであるから(同法1条参照),被害者において,その未てん補損害の額が自賠責保険金額を超えるにもかかわらず,自賠責保険金額全額について支払を受けられないという結果が生ずることは,同法16条1項の趣旨に沿わないものというべきである。

(2) 老人保健法41条1項は,第三者の行為によって生じた事由に対して医療給付が行われた場合には,市町村長はその医療に関して支払った価額等の限度において,医療給付を受けた者(以下「医療受給者」という。)が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する旨定めているが,医療給付は社会保障の性格を有する公的給付であり,損害のてん補を目的として行われるものではない。同項が設けられたのは,医療給付によって医療受給者の損害の一部がてん補される結果となった場合に,医療受給者においててん補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,てん補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解され,医療に関して支払われた価額等を市町村長が取得した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,市町村長が同項により取得した直接請求権を行使することによって,被害者の未てん補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである。

5 以上によれば,原審の判断は,正当として是認することができる。所論引用の各判例は事案を異にし,本件に適切でない。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官那須弘平裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官、田原睦夫裁判官近藤崇晴)  

 
「事故で脳脊髄液減少症を発症」因果関係認めず〜静岡地裁判決
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shizuoka/news/20080519-OYT8T00685.htm (読売新聞静岡版)

乗用車を運転中に別の乗用車と衝突し、相手方の女性に脳脊髄(せきずい)液減少症を発症させたとして、業務上過失傷害罪に問われた牧之原市の自動車販売修理業の男性被告(64)の判決が19日、静岡地裁であった。同症は医学上明確な診断基準が確立されておらず、裁判では交通事故と発症との因果関係の有無が争点になったが、長谷川憲一裁判長は「症状が事故以外の原因によって起こった可能性を否定できない」として因果関係を認定せず、被告に罰金30万円(求刑・罰金50万円)を言い渡した。

判決によると、男性被告は2002年8月1日午後3時20分ごろ、乗用車で旧相良町の交差点を右折する際、対向してきた女性(当時59歳)の乗用車と衝突。女性の車は横転して道路脇の水路に転落し、女性は3週間の全身打撲のけがを負った。

脳脊髄液減少症は、脳と脊髄を循環する脳脊髄液が漏れ、頭痛やめまい、背中などの痛みが生じる病気。ただ、起きる原因や症状などの診断基準は医学界でも一定していない。

男性被告の裁判で検察側は冒頭陳述などで、「事故後、女性は全身の痛みや頭痛、吐き気などによって、家族の介助なしでは生活できない状態にある」と説明し、この日の判決で長谷川裁判長も「女性が症状を偽っていないことは明らか」と認めた。

だが、検察側が、これらの症状を「事故が原因の脳脊髄液減少症」と主張したのに対し、判決で長谷川裁判長は「(女性を)脳脊髄液減少症と認定する明確な所見は認められない」と指摘したほか、「女性の症状と事故とに因果関係があると言うには疑いが残る」とも述べ、因果関係を認めなかった。

判決後、被告側の杉田雅彦弁護士は記者会見し、「予想通りの判決。医学界で診断基準が確立しないうちは、起訴するのはやめてほしい」と述べた。一方、土持敏裕・静岡地検次席検事は「いろいろ議論があることは承知のうえで起訴に踏み切った。控訴するか否かは慎重に検討する」とのコメントを出した。

(2008年5月20日読売新聞)

 
<髄液漏れ>事故で発症と推認 東京高裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080801-00000012-mai-soci  (毎日新聞 8月1日2時31分配信 )
交通事故で脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)を発症したかが争われた民事訴訟で東京高裁は31日、事故と発症との因果関係を認めた横浜地裁判決(1月)を支持し、加害者側の控訴を棄却した。原田敏章裁判長は「事故と髄液減少症との間に相当な因果関係を肯定できる」と指摘した。「事故によって髄液漏れを発症した」と認定した民事訴訟判決は地裁で4件明らかになっているが、高裁は初めて。

判決によると、事故は横浜市内で04年2月に発生。自営業の40代の男性が運転する乗用車が交差点を直進中、前から右折してきた乗用車に衝突された。男性は当初、頸椎捻挫(けいついねんざ)などと診断されたが、立っていられないほどの頭痛が続いた。髄液漏れと診断されて「ブラッドパッチ」という髄液漏れを止める手術を受け、治った。

この日の判決は(1)横になると頭痛が和らぐといい、髄液漏れの典型的な症状の一つとされる起立性頭痛の症状と符合(2)症状は事故前にはなく、事故後に発症するような出来事もなかった−−ことを挙げ「発症は事故の衝撃や外傷によると推認できる」とした。

横浜地裁は、加害者側に治療費など676万円余の賠償を命じていた。

髄液漏れは発症のメカニズムに未解明な点が多く、診断基準が定まっていない。患者や家族らが研究推進を求め2月、34万7500人分の署名を舛添要一厚生労働相に提出している。【渡辺暖】


 
ひき逃げ事故、飲酒運転止めなかった同乗者に賠償命じる判決
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081015-OYT1T00422.htm?from=top  (2008年10月15日13時36分 読売新聞)
鹿児島県・奄美大島で2003年に起きた飲酒ひき逃げ事故で、次男(当時24歳)を亡くした大分県国東市の遺族が、「危険な飲酒運転を止めなかったのは違法」として、事故を起こした元少年(当時19歳)と酒を飲み、事故直前まで元少年の乗用車に同乗していた鹿児島県内の男性(24)に慰謝料など約5300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、鹿児島地裁であった。

小田幸生裁判長は男性に全請求額の支払いを命じた。

交通事故裁判に詳しい弁護士らによると、飲酒運転事故で、事故前に降車した同乗者の責任を求めた判決は極めて異例。

遺族は「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」共同代表の佐藤悦子さん(57)と長男(34)。

判決によると、次男の佐藤隆陸さんは03年11月、仕事で名瀬市(現奄美市)に出張し、市道を歩いて横断中、同市内の元少年=業務上過失致死罪と道路交通法違反(酒気帯び、ひき逃げ)で有罪確定=の車にはねられ死亡した・元少年は事故前、同市内の知人宅で約4時間、男性と発泡酒や焼酎などを飲んでいた。

                  
 
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